ポイントカードはお持ちですか?

やっぱり、伊月君が素敵に見えたのは、私の恋の魔法とか宇宙人に拉致されて眼球に画像処理装置が埋め込まれたわけではなかったようだ。

ぬめぬめと絶望感が広がる。

『紹介なんて絶対に嫌』

『なんでよ!』

『私が好きだから!』

自棄になって投げ出すように送信した。


あーあ、ちょっと前は多分私くらいしか伊月君に注目してなかったはずなのに、すっかりみんなの伊月君だ。
本庁舎にごっそりいる若い女の子の誰かが彼を持っていくのかな。


『詳しく聞きたいから今週末会おうよ。そっちに行っても飲むところ限られるし、こっちに出てきて。うちに泊まっていいから。ちなみに旦那は修学旅行でいない』

昼休み終了ギリギリでそういう返信が返ってきた。

望むところだ。
三十路の絶望、洗いざらい聞いてもらおうじゃないの。


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