ポイントカードはお持ちですか?
7 仕事に逃げてもいいですか?
昔と違って深酒する人が減ったと、年輩の方々は責めるように言う。
飲み会の翌日は寝不足で二日酔いが当たり前だった時代があるそうだ。
だるくて職場で寝ていたとか、寝坊してそのまま休んだとか、その類の自慢話は数え切れない。
でもこのご時世そんな仕事をしていたら同僚からも世間からも白い目で見られる。
翌日に影響しない範囲で楽しむ、個人のペースを守って強要はしない、そういう暗黙のルールあっての平日飲み会なのだ。
「おはよう、咲里亜ちゃん」
ペースを守った奈美さんがいつも通りに出勤してきた。
「おはようございます」
ペースを守らなかった私の声はわずかながら枯れている。
「今日の顔色はひどいね。なんか課長にしこたま飲まされてなかった?」
「量はそれほどでもありません。ただ私、日本酒は得意じゃないので、しっかり酔いました」
「二次会はいなかったのに、たいぶ残ってるみたいね」
「こういう時に年を感じます。絶対分解悪くなってると思いますもん」
うんうん、と深くうなずき「ウコン飲んだ?」と奈美さんは聞く。
もう「まだ若いじゃないの~」とは言ってもらえないのかな?
30歳ってそれほど年じゃないんだけどな。
誰もかばってくれないから自分でフォローした。
「さっき買ってきたのでこれから飲みます」
本当は体調の悪さは日本酒のせいだけではない。
むしろ、その後に問題があるのだけど、そんなことみじんも感じさせてはならない。
全部酒のせいでオールオッケーだ。
「おはようございます」
しなびた心臓がここだけ元気にドッキンと言った。
当然お風呂に入ったであろう伊月君は当たり前だけどいつも通り淡々と仕事を始めた。
私と違ってグズグズになっている様子もない。
今はサラサラしている髪がほんの数時間前くしゃくしゃと私の目の前にあったことを思い出し、顔に熱がたまってきた。