ポイントカードはお持ちですか?
あれから一月ほど経つ。
伊月君と私の関係に変化はなかった。
仕事での接点は多いと言っても別の課。
抱える案件が重ならなければ接触する機会もない。
何よりも私の課で大きなトラブルが続いていた。
業者さんや部長を含めての打ち合わせや会議。
「やりたくなーい」なんて言っていられないほどの仕事による残業。
疲れて帰るから最低限のことだけして、倒れるように眠る。
神様からのプレゼントにどっぷりつかりきって、一寸先も見えない。
仕事以外のことを考えていれらない毎日に感謝する日がくるなんて、数ヶ月前の私が知ったところで信じなかっただろう。
「風見さん、これ50部コピーしてこのリストに発送してもらえる?今日中に」
彼女に対する罪悪感も擦り切れた神経とともにすっかり薄れていた。
「わかりました」
「ごめんね。そのうちランチをごちそうするから、よろしくお願いします」
必要なことだけ伝えて、自分のイスにドカッと座る。
身体の重さは純粋に仕事疲れだ。
あの日愛おしいとさえ思った身体の違和感も、翌日には残ったアルコールとともにすっかり消えていた。
伊月君と私の間にあったことを証明するものは何もない。
すべて私の妄想だったのではないかとさえ思えてくる。
妄想だったらよかった?
薄れてはいてもまだ覚えている感触を想って、小さく首を振る。
あんなに悲しい思いをしたのだ。
痛みとともに、あれは確かにあったこと。