レンアイ前線、雨のち晴れ【LOVEドロップス参加作品】
マッスグナヒトミ
「久しぶりにランチでも一緒にどう?」
2時間以上にわたる、長いオリエンテーションの後、友人の梓<アズサ>に誘われ、大学近くにある小さなカフェにやって来た。
梓は同じ学部に同じサークル。
私にとって、数少ない本音を話せる友人の一人でもある。
夏休み中、私がサークルに出ていなかったため、会うのは本当に久しぶりだった。
「――引退記念登山?」
私は、頼んだパスタをフォークに絡ませながら、梓の話に耳を傾ける。
「うん。来週の土曜なんだけどね。
4年生の先輩の引退記念に、ワンゲルっぽくパーッと山でも登ろうって話になって。
もちろんしずくも来るでしょ?」
「あー……」
4年生。
私たちの一つ上の先輩たちだ。
「ありがとう」では足りないほどたくさんお世話になった。
だから、参加したい気持ちはあるけれど……。
「どうしよっかな……」
口から出た言葉は消極的なもの。
心の奥で突っ掛かっている何かが、私を踏み留まらせていた。