レンアイ前線、雨のち晴れ【LOVEドロップス参加作品】
梓もそれに気付いたのか、遠慮がちに問いかけてくる。
「……中瀬くん?」
返事の代わりに、私はフッと曖昧な笑みを浮かべた。
きっと、相当ひきつった笑顔。
私の中で、まだ過去になっていないということを象徴している。
梓は、そんな私を何とも言えない表情で見つめていた。
……全部、知っているから。
片想いしていた頃の私も、両想いになった後の私も。
そして……
君に別れを告げられてからの私も……全て――。
「ごめんね、なんか……しんみりさせちゃって」
作り笑顔でそう言う私に、梓は静かに首を横に振る。
その表情は私以上に切なそうで……
周りから楽しそうな笑い声が聞こえる中、私たちのテーブルだけは違っていた。