レンアイ前線、雨のち晴れ【LOVEドロップス参加作品】
ここからバイト先のレストランまでは歩いて20分程度。
……ゆっくり歩いても間に合いそうだな。
そう思いながら、ドア付近にある傘立てから自分の傘を引き抜く。
「ありがとうございましたー」
笑顔の店員に見送られながらドアを押すと、
カランカランという高い音が鳴り響いた。
その時……
「……しずくっっ!!!」
……え?
後ろから聞こえてきたのは、梓の大きな声。
振り返ると、席から立ち上がった梓が、じっとこっちを見つめていた。
あまりの大声だったために、他の客も店員もびっくりしたように私たちを見ている。
だけど梓は全く気にする素振りも見せず、こちらに向かって歩いてきた。
「……梓、どうしたの?」
私、何か忘れ物でもした?
目の前に立つ梓に、そう続けようとした時。
ゆっくりと梓が口を開いた。
「……本当に、行かなくていいの?」
――その瞳はすごく真剣で。
捉えられた私は、なかなか目を逸らすことができなかった。