【短編】大嫌いな君にデートに誘われたって行くわけないでしょ。多分。
君とデート
屋上で新とキスした日。
それが、新と会った最後の日だった。
「昔から心臓が悪くて」
告別式でそんな声がどこからか聞こえたっけ。
何にも知らなかった。
新のこと。
何にも。
「優しくて気遣いのできる子で」
「いつも笑顔でこっちが幸せになるような」
そんな言葉ばかりが聞こえてきて。
落ち込んでる私を心配して話しかけてくれたのは、新だったのに。
どうして気付かなかったんだろう。
「ちゃんと治して」なんて。
私の言葉は全部。
きっと全部。
新にとって、重荷でしかなかったはずなのに。
ずっと笑ってて。
こんな私のこと、好きだって言ってくれて。
なのに。
私は…。
私は告別式の会場の外に出てからも、溢れてくる涙を抑えることができなかった。
何にも。
何にもしてあげられなかった。