ハロウィン
「はろうぃん?・・・あ、ああわかった!人間が変に化けて街を練り歩くやつだろう?違うかい!?」
大きな一つ目をいつも以上に大きく見広げ、一つ目小僧の要蔵【ようぞう】が聞く。
「人間って可笑しなことするよなー」
倉坊主の金兵衛【きんべえ】の言葉に周りにいた奇妙な姿をしたモノたちはどっと笑った。
まさかモノノケに『変』と言われるとはな・・・。
俺は心の内でそう呟いてその奇妙な姿をしたモノたちをそれぞれ見つめ見た。
人の姿をしたモノもいれば動物の姿をしたモノもいる。
そして、それだけではなく物の姿をしたモノもいれば、人と動物、物までもが混ざったようなモノたちもいる。
人はそのモノたちを『化け物』や『妖怪』、『モノノケ』と言う。
「坊も何かに化けるのかい?」
そう俺に聞いてきたのはけち火の小枝【さえ】だった。
小枝はごうごうと燃える火の玉の中でクスクスと不気味に笑っている。
女の生首が燃えている。
俺は小枝を見る度にそう思う。
「いや、俺は・・・」
「もちろん、化けますよ」
そう答えたのは先生だった。
俺は先生の声がした方を振り返り、大きな溜め息を吐き出した。
それを見て先生は意地の悪い笑みを浮かべた。
全く・・・この人は・・・。
「折角のお祭りなんですから楽しまないと損ですよ?」
本当にこの人は・・・。
「・・・わかりました。・・・化けますよ」
俺の宣言に奇妙な姿をしたモノたちは歓喜とも咆哮ともつかない声を上げた。