縁側で恋を始めましょう
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「久しぶり、紗希」
「暁?」
夜の10時過ぎ。
一日の仕事を終えてシャワーを浴び、缶ビール片手に部屋着でくつろいでいた私は、その訪問者に唖然と口を開いた。
玄関に立つ男はニコリともせずに淡々と片手を上げて挨拶をする。
最後に会ったのは、私がこの家に住む前だから六年前。
綺麗な二重の端正な顔立ちは昔のまま、背の高さも変わらず。前髪が長めだが、サラサラの黒髪も相変わらずだ。
大学生の頃とは違い、幾分大人びたようだが、彼の持つ雰囲気は変わらない。
幼馴染で弟のような暁。
変わらない彼に、六年ぶりという感覚はすぐになくなった。
しかし、今は再会を喜んでいる場合ではない。なにか良からぬ空気に顔が引きつる。
「久しぶりって、え? どうしたの急に」