縁側で恋を始めましょう
「馬鹿だね、私。大切なことにずっと気づこうとしなかった。もう遅いね」
「紗希……」
本当にもう遅いのかもね。
机に突っ伏し自嘲しながら、ゆっくりと意識を手放した。
ーー
心地よい揺れに目を覚ますと、そこは先ほどの騒がしい店内ではなく、タクシーの中だった。
隣を振り返ると、薄暗い車内で笹本が厳しい顔をしてこちらを見ていた。
「笹本……?」
香苗と飲んでいたはずだが、どうして笹本がいるのだろう。
疑問に思い、首を傾げると笹本は眉を潜めながらため息をついた。