縁側で恋を始めましょう
そうだったのか。そんな昔から……。
「私、嫌われたって思ったの」
ボソッと呟くと暁は首を傾げた。
「暁が家を出て行って、半月以上も帰ってこなくて、連絡も私にはなくて……。やっと自分の気持ちに気が付いたのに、もう遅かったんだって後悔した」
「あんなことで嫌いになったりしないよ」
「でも、連絡してくれなかったでしょう。急に海外へ行ってたし」
やや恨みがましく見つめると、「あぁ」と破顔した。
「確かに、初めの数日はお互い、少し距離を取ろうかと思って家を出たのは本当。ホテルに泊まってたんだ。そしたら、すぐに次の本の取材で急にフランスに行くことになってさ」
「フランスに行ってたの?」
暁はうんと頷いた。
「当初の予定はまだまだ先だったんだけど、急なスケジュール変更で急遽ね」
「そうだったの……」
「実はその時、日本のホテルにスマホを忘れたことに気が付いたんだ。紗希の番号は覚えていなかったから、とりあえず実家には連絡したんだけどね」
「だから連絡が取れなかったの?」
「ごめん」
なんだ、そういうことだったのか。
ホッと安堵すると優しく頭を撫でられた。