縁側で恋を始めましょう



そう聞くと暁は目を逸らす。
その反応にため息が出た。
そういうことか。ここの大家でもある暁の両親はなにも知らないってことね。

「ちょっと待って。とりあえずおばさんたちに連絡を……」
「やめろ」

取り出したスマホを暁が抑え込むように手で制止した。
その手の大きさと耳元で聞こえた低い声にドキッとする。一瞬だけ、知らない人のように感じた。
目線だけ暁に向けると、真剣にしかし縋るような目で私を見ていた。

なんて顔をしているの……。

「母さんたちには黙っていてほしい。俺がここに居るのは秘密にしてほしいんだ」
「なんでよ」

暁は俯き、それには答えない。もうため息しか出なかった。
暁は一人暮らしをしていたはず。

「住んでいた家は?」
「解約した……」

部屋にあった荷物は近々ここに届くのだという。
勝手な行動に唖然とするが、だからと言って急に住むと言われて頷けるわけがない。
ここの契約者は暁ではなく暁の両親なのだから、いくら息子とはいえ、大家に一応は報告すべきではないだろうか。

そもそも急に部屋を解約してここに転がり込んでくるなんて……。
どういうわけか問いただすが、「ここに住みたかったから」としか答えなかった。


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