縁側で恋を始めましょう
しかし……。
「でも、暁だって仕事があるでしょう?」
暁だって社会人だ。
何の仕事をしているかは知らないが、仕事があるのに食事も掃除もやる時間なんてあるのだろうか。
「自営業で家にいるからなんてことない」
「自営業?」
首を傾げると、暁は頷いて床に置いていたボストンバックを持った。
「俺、小説書いているんだ」
「……は?」
目が点になった。
「なぁ、二階の空いている部屋使っていいだろ」
「あ、うん」
頷くと暁は荷物とともに二階へ消えていった。
驚いてつい頷いてしまった。これでは了承したと同じではないか。
もう、仕方ないなぁ……。
その背中を大きくため息をつきながら見送る。
でも今、小説書いているって言った?
暁……、小説書いて生活しているの?
つまり外で働いていないってこと?
そもそも、小説書いて食べていけているの?
もしそうなら、暁の両親やウチの親から話を聞いているはずだ。
でも、時々実家へ帰るが、暁が小説家になっただなんて一度も聞いたことがない。
つまり……、小説家は夢もしくは小説家の卵ってこと?
あのこ、26歳にもなって何やっているの……。
自然とため息が出た。暁の両親にも言うなっていう意味がよくわかった気がした。