縁側で恋を始めましょう


別れを切り出された理由が思っていた女性ではなかった、それが決定的だったと言われたのだ。
料理ごときで振られるなんてと当時は憤慨していたが、その彼は家庭的な女の子を求めていた。
自分の母親の様にお淑やかで、料理や掃除や裁縫が得意な女の子がいいと……。ただのマザコンで、私はその彼の彼女基準に満たしていなかったのだ。

「ぶっ、おばあちゃんって」

話を聞いた暁が腹を抱えて体を震わせている。「こいつ」と思わず、隣から足を蹴る。

「笑うなんて失礼な」
「だって」

暁はクククッと目じりの涙をぬぐっている。そんなに笑うことか。口をとがらせ、グビッとビールを飲む。

「まぁ、良かったじゃん。マザコンなんかと付き合っても苦労するだけだよ」

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