縁側で恋を始めましょう



「あ、きら?」

自分の上から覆いかぶさるようにして冷たく見下ろしてくる暁に戸惑いを隠せない。
頭が追いつかなかった。
あれ? なんで?
さっきまで玄関にいたのに、どうして暁が私に覆いかぶさっているのだろう。
なにがどうしてこうなっているのだ。

混乱をしているのに、なぜか今までに見たことのない暁の様子に胸がどきどきとうるさく鳴っている。
切なげな顔の暁はどこか艶っぽさをにじませており、妙に男を意識させた。

「暁……?」

自分の声が戸惑っているのがわかる。部屋は涼しいはずなのに、じっとりと汗が出てくる。

「ちょっ、どいて暁。ふざけないで」

そう言って手を払おうとするが、グッとおさえつけられビクともしない。
両力を入れているのに、手を簡単に片手で押さえつけられるなんて……。
不安から見上げたその顔は、知らない男だった。暁の見たことのない顔に急に焦りを感じる。


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