縁側で恋を始めましょう
ウチの会社は、お菓子会社で世間的にも名前が通っている大手メーカーだ。
季節ごとのお菓子や、昔から変わらない定番商品も豊富。
そこに競うように常に名前を並べるのが堤フーズである。
そこの社員と結婚して、ウチで仕事を続けるのは何かと大変だろうな。残念だけど、辞めて正解かもしれない。
「でも結婚か。いいなー。私たち今年29歳だよ、どうする」
香苗が羨ましそうに呟いた。
どうするって……。
それには同意の前に反論させてもらう。
「彼氏持ちが何を言うか」
香苗は同棲中の彼氏がいる。
結婚したいのにプロポーズされないといつも嘆いているが、彼氏なしの私に言うセリフではない。
私のジト目に気が付くと慌てて手を振って謝った。