縁側で恋を始めましょう
緊張していた分、なんだ……と力が抜ける。あれは暁のおふざけだったのだろうか、とさえも思えてしまう。
いや、しかし、おふざけにしては度が過ぎているが。
すると突然、暁が私に視線を合わせた。目が合い、ドキッとする。
「スカーフして暑くないの」
一番、指摘されたくない所を……。
焦りつつ、自分で作った卵焼きを頬張りながらシレッと聞いてくる暁になんだかムッとした。
今日の私は白いブラウスにスカートという会社スタイルに、水色のスカーフという、夏にしてはやや首元が暑苦しい服装をしていた。
誰のせいで、こんなくそ暑い中スカーフなんてしなければならないのか。原因を作ったのはお前だ! と叫びたくなるのをグッと押させる。
「誰かさんのおふざけのせいでね」
そう言うと「おふざけねぇ……」とバカにしたように鼻で笑われた。
「暁、可愛くない」
「この歳で可愛いとかいらないし」
「じゃぁ、ムカつく」
「はいはい」
余裕そうに笑われてさらに腹が立つ。もういいと、席を立ち出勤の準備を始めた。