縁側で恋を始めましょう
「紗希って昔から困ったことがあると頭を抱える癖があるよね」
そう指摘されて、私は頭にのせていた手をそろりと離す。確かに何かあると頭や髪の毛を触ってしまう癖があった。
「ねぇ、紗希は何に困っているの? 俺の事?」
暁は隣で寝そべりながら私に視線をよこす。やや面白がっているような表情が可愛くない。
「ねぇ、俺の事知りたい?」
私をとらえる瞳が一気に妖しく光る。またバカみたいに心臓が落ち着かなくなった。
暁はいつからこんな目が出来るようになったのだろう。
「ずっと紗希は俺に何か言いたそうにしているもんね。知りたいんでしょう? 俺がどんな名前で本書いて、それが出版できているのかどうなのか。本当に作家なのか、ただの夢見るニートなのか。どうして親に内緒でここに住んでいるのか、なんで……紗希にあんなことするのか」
「それは……」
「まずは仕事についてだけど」
自分のことを話そうとしなかった暁が珍しく話そうとしているのが分かり、黙ってそれを待つ。しかし。