縁側で恋を始めましょう
7・
その話を聞いたのは、企画会議がいつもより長引いてしまい、少し遅めの昼休憩に入ろうとした時だった。
社食へと向かうため部署を出ると、廊下を香苗が血相を変えて走ってきた。
「あっ、紗希!」
「なにどうしたの、血相変えて」
「ねぇ、これ見た?」
香苗は手に持っていた雑誌を広げて私に見せてくる。
先日出た週刊誌だ。
「どうしたのこれ?」
「昼休みに買って読んでいたんだけど、これ。ここ見て」
香苗が指を指した所を見て、アッと息を飲む。
「ねぇ、この写真の人、暁君じゃない?」
そう呟く香苗にうまく返事が出来ない。
そのページには大きく、『新進気鋭のイケメンミステリー作家、空野アカツキを大特集。デビュー三年目にして初めてメディアに見せるその姿にファン熱狂』と書かれていた。
そしてページの写真。そこには髪を後ろに流してセットし、黒いスーツ姿に身を包んで微笑む暁の姿があったのだ。