縁側で恋を始めましょう


勝手にお金がないと思っていたけど、実際は普通のサラリーマン以上は余裕で稼いでいるだろう。
だから、家賃負担するということも言えたし、生活費も特に困らなかったのか。

知らなかった。何も知らなかった。

でもそんな大事なことウチの親だって暁の親だって何も言っていなかった。
なんだか仲間外れにされた気分で面白くない。そんな気持ちが棘のように言葉で出る。

「ふぅん……。重版決定だそうで、おめでとうございます」
「どうも」
「これから先生とお呼びしなくてはいけませんね」

嫌味っぽくそういうと、暁が一気に冷たい目線をして振り返った。一瞬その眼にひるむが、口は止まらない。
イライラが収まらなかった。

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