縁側で恋を始めましょう


射抜くような鋭い目に身体がすくんだ。言い返せず俯く。

「そもそも忘れていたのは紗希の方だろ」
「え? どういうこと?」

意味が分からずに首を傾げるが、暁は答えない。
忘れているってなんのこと?
私が何を忘れているというの?

「俺は、小説家になったって言えば紗希が気付いてくれると思っていた。名前だってすぐにわかってくれると思っていた。でも紗希は何も覚えていないんだ」
「覚えていない……?」

何を覚えていないというのだろう。
戸惑ったまま暁を探るように見ると大きなため息をつき、おもむろに立ちあがった。


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