雪の日に祝福を…。
  


 最近の体調は、著しく悪化をしている。
 食事が摂れない日々が多くなって点滴をされている。
 緩和ケアの所為で常に頭がボーッとしていて考えることも億<オックウ>劫だ。
 そろそろなのだと解っていた。
 主治医にも話しをした。
 延命などこの後に及んで願ったりなどしない。


「開放感・・・。」


 町並みを見渡せる所へ車椅子をつけて両手を伸ばして空を向く。

 病室の殺風景ななかで永遠の眠りに付くなんて真っ平だ。
 誰も居なくていい。そう、初めから〝独り〟だったのだから。


 》 》


「瑠々!」


「悠葵さん。遅かったじゃない。」


「悪い。月依・・・来てないよな?」


「え?お姉ちゃん?」


「そう、来てないか?」


「来たことないじゃない。」


 夫の言葉に驚きながらも返す。


「そうか。みんな来たら待っててもらってくれ。」


「お姉ちゃんに何かあったの?」


「いいな。みんなを引き留めておけよ。」


「ちょ、悠葵さん!!」


 走り去る夫の後ろ姿だけを見るしなかった。


 》 》


「愛されたかったね、月依。」


 暖かな陽気が心を穏やかにする。


  
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