雪の日に祝福を…。
  


 それは、元婚約者だからこそ解る彼女の行動パターンだった。


「行こう。〝何を〟やらかす気かは解らないが行かないと・・・。」


「はい!!」


 二人は、走って屋上へと向かうエレベーターに飛び乗った。


 》 》


「そろそろ、みたい・・・。」


 市販で許容量を超える市販薬を購入していた。それをワインと一緒に飲み込んでだいぶ経つ。


「今なら、空を飛べそう。ふふ。」


 頭が違う意味でボーッとしてきた。
 薬を使うのは、卑怯な手だとは思ったが自分を保てるギリギリは保ったつもりだし自分で選択できるうちに選んだ幕引きでもあった。
 このままでは、生き長らえて雪の日に旅立ってしまうことも今の医学ならあり得てしまいそうだったからだ。
 それだけは・・・絶対にいやだった。


「先生騙しちゃった。あとで知ったら怒るかなぁ。」


 真剣に言葉を信じて送り出してくれた人を思う。


「ああ、今日は…静かでいいわね。」


 ゆっくりと立ち上がり袋を手に持った。


「あなたを忘れたりしないわよ。」


 手に持つ袋に向かって呟いた。


 ザアァァァッ・・・。


   
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