アイドルの素顔に夢を見るのは間違っている


凛太朗くんは、しばらく黙りこんだあと私からリストバンドを受け取ってスルスルと包帯を外した。



ま、まさか


と内心ドキドキしながら見つめていると、その手にリストバンドをつけて えへへ と笑う。


か、可愛い!!凛太朗くん可愛いよっ!!



「き、気に入ってくれた?」


「うん。みゆちゃんがくれたから気に入ったよ」


「ほ、包帯はもういらない?」


「んー……いらないかな……」


ヤッタァああああああああ!!!


久しぶりに心の底から達成感を味わった瞬間だった。


まだややこしいのが4人いるけれど、でも一歩前進したのは間違いない。




そのあと2人で事務所まで戻ると、3人は驚いたように口を開けていた。



「ふふふ……凛太朗くんの包帯が外れました!! アイドルとして真面目に頑張るそうでーす!!」


イェーイと奴等の目の前で凛太朗くんとハイタッチ。


「……2日ぽっちで依存させたのか。」

「は?依存?」


蓮斗さんの物騒な言葉に眉を歪めると、スマホが鳴り響いた。相手は今日から来てくれるダンスの先生。今日は基礎から教えてくれるらしい。



「…ちょっとまってて。みんなジャージあるの!?」


「ダンボールの中にあるわよ」


「俊輔さん出しておいてください!!」



用事を押し付けると

小娘のくせに。

と舌打ちされたけど私はそのまま事務所から出て行った。



「……凛太朗本当に真面目にアイドルやれるの?」

「うん。慎太朗。僕やりたいこと見つけたから」

「……あら、何?私も興味あるわ」





「あのね…………アイドルになってお金持ちになって……




みゆちゃんを閉じ込めておけるお家を買うの。」


「「え…」」


「……みゆちゃんを僕だけのものにして、ずっと一緒に暮らすんだぁ。死ぬ時も一緒に死のうと思う。そのためには売れてお金持ちにならないと……ね?」




電話が終わってガチャリと事務所のドアを開けたら、何故か俊輔さんと慎太郎くんが青ざめてる。



「どうしたの?」


「……御愁傷様ー。心優ちゃん」


「え?な、何が?慎太郎くんちょっと!ゲームしてないで!」


頭を抱えた俊輔さんは私から目をそらして、


「さ、ジャージよね」


と不自然に動き出した。



一体なんだと言うの。この人たち。



「……みゆちゃんずーーーっと一緒に頑張ろうね。」


「あ、う、うん。もちろん」


凛太朗くんの少し黒い笑みにん?と思ったけど、ここまでやる気を出してくれたから良しとするか。




「……メンヘラをヤンデレに覚醒させるなんて、本当に馬鹿女だな。」



何かつぶやいて鼻でわらった蓮斗さんを不思議に思いながら、私は1人更生させたこの状況を喜んだのだった。
















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