アイドルの素顔に夢を見るのは間違っている
ギャンブルは蜜の味
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「はぁあ眠い。」
とりあえずボイトレの先生とダンスの先生は確保した。
お母さんが残した名刺入れを見ていたけれど、ご丁寧に誰に何を頼めばいいかという説明がつきのノートも発見。自分が死ぬ間際、必ず私がこの件を引き受けるであろうといった感じで用意してあることに少し腹が立った。
まぁ、やると決めたからにはやるんだけど。
事務所に向かう途中、何度もあくびしながらひたすら歩く。
……アイドルになるための環境は、正直怖いもの知らずだ。お母さんの顔が広すぎるんだもん。
私が会いに行けば必ず
「由乃ちゃんの娘なの!? 生きてる頃には彼女に世話になってね。もちろん協力するわ」
なんて必ず言われる。
私はそのたびなんとも言えない感情に襲われるのだ。
まぁそんなことは置いておいて、問題は奴らだ。
凛太朗くんは確かに練習には真面目に出るようになったけど、たまに黒い笑みを浮かべてるのが気になる。
そして俊輔さんは、おネェだけど練習には真面目。
私はアイドルグループを作るなら、彼をリーダーにしようとは目論んでた。
問題は
女たらし
ギャンブラー
ゲーマーだ。
こいつらがまぁやる気ない。
ほんとにやりたいと思ってんの!?
とキレたいくらいやる気ない。
どうやら5人とも前にどこかの事務所に所属してたっぽいけど、あの様子じゃクビにされたのかな。
「はぁ。あ、こんなところにまたパチンコ店ができてる…」
色んなことを考えながらふと大きな花が飾ってあるパチンコ店をみると、行列ができていた。
……みんな朝からご苦労なこと。
他人事なのでそんなことを思いながらその行列を通り過ぎたが、見たことあるような顔がいた気がして思わず振り返る。
………
「……健吾さん?」
そこでハッとして目が覚めた。
あのクソギャンブラー!!!
練習には全く来ないくせして、なに朝からパチンコ店に並んでんだっっ!!!!
段々怒りメーターが上がってきて、ツカツカと馬鹿の近くに近寄り
おじさんたちと楽しそうに話す健吾さんを睨みつけた。
「…新店なんで、軍資金はずむつもりなんっすよー!!」
「なにをはずむの?」
私が声をかけたと同時にあははと笑っていた彼の顔が少し引きつる。
「…あ、え、えっとマネージャー……」
「何してるのかな??」
ニコリと微笑みかけると、完全に笑顔が消えた。
「いや、あ、ほ、ほら、お金を稼ごうと……さ」
「……凛太朗くんに聞いたけど、昨日も一昨日も全てスッたらしいじゃない。いい加減気付いたらどうですか??ギャンブルセンスがないことを」
「うっ……い、いや、でも今日はいけそうな気がして…」
「今日はボイトレがありますよ。さぁいきましょ」
「た、頼む!マネージャー!!い、1時間前から並んでんだよっ!!」
見事な依存症だ。
周りのおじさんたちが
彼女かー?
なんて囃し立てている。
「……知るか。ほらいくわよ。」
グイッと腕を引っ張るといい大人が
うわぁああ!新台がぁあああ
と泣き叫びながら手を伸ばした。
……こんな残念なやつがアイドルになれるのかよ。