アイドルの素顔に夢を見るのは間違っている
やっぱりあのあとも、2人でコソコソと会話をして
どうしようか
とか
でもやっぱりな
とかそういう会話をしているのが目に付いた。
会話の内容からなんとなくわからないかと聞き耳を立ててはみたけれど、全く理解できず。
気が付けばもうそんな怪しい会話もしなくなっていた。
蓮斗さんは結局来なかったし、今日は散々だ。唯一よかったのは健吾さんがギャンブルに行かなかったことくらいじゃないだろうか……
んー!!
と思い切り伸びをして、凛太郎くんのお見舞いに行くべく薬局に寄る。健吾さんのことは、俊輔さんに頼んだから、今日はもう大丈夫だろう……お金も全て私が持ってるし
まぁ夜ご飯くらいはしてやるかと、スーパーにも寄ってそのまま先に帰ってるであろう奴らの元に向かった。
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「大丈夫?凛太郎くん」
家に着いて、凛太郎くんの部屋に行くと真っ赤な顔の彼が目に映る。体温計で熱を測らせると38度。中々の高熱だ
「みゆちゃん…僕このまま死んじゃうのかな……」
「安心していいよ。絶対死なないから」
弱気なことを言う彼に笑顔を作って、薬を飲ませた。病院に連れて行こうとしたら全力で拒否されたので、今日は1日様子をみることに。
手を握って、眠らせた後私はリビングへと向かう。
そこにはぼーっと何かを考えている健吾さんが座っていた。
「……健吾さん?」
私の呼びかけにビクッと彼の方が揺れる。そしてゆっくりと振り向くと力ない笑顔。
あからさまに元気がない……ギャンブルを禁止したからじゃないよね……だとしたら相当な病気なんだけれど……
「……どうかしたんですか?」
恐る恐る質問してみると
「…いや、俺って本当に運がないなって考えててさ」
と意味深な答え。
「……いきなりどうしてそんなこと考えるのよ」
「いや、楽して大金が欲しいというかなんというか」
「なによそれ。楽してお金が手に入るわけないでしょ。汗水垂らして稼ぐのよ。みんな」
「そうなんだよなぁ……」
おかしい。
そりゃ出会った時からこいつらは、なにかしらおかしいけれど特に変。
「……どうしたの??」
私はこれでも彼等の社長でマネージャーだ。
何か困ったことがあるのならば、何とかしてあげないと。と思うことは当たり前
「いや、別にどうもしないんだけどさ。パチンコしたいなぁなんて!! お金かしてくれる?」
「かしません。」
「ははっ…だよねー」
だけどそれでも相手が頼ってくれない限りは何にもしてあげられないし、助けてあげられることなのかもわからない。
凛太郎くんの時は、年下ということもあって頼ってもらえたのかもしれないけれど、健吾さんに関しては年上だものね。もしかしたらプライドか何かあるのかも。
だから土足で乗り込むのはとても難しいんだ。
「……ご飯作りますね」
お母さんならうまくやっただろうか。
私は、自分がつまづいた時すぐにそう考えてしまう。
とても愚かな対抗心だけど、わかっていても悔しくて解決策を探すために無心でご飯を作るのだった。