アイドルの素顔に夢を見るのは間違っている
いま家にいる人数分のご飯をつくり、凛太郎くんにおかゆを作って持って行った。
「みゆちゃん…食べさせて」
なんて甘えてきたので仕方なく食べさせてあげる。
そのあとは後片付けして、また凛太郎くんの看病
気が付けばウトウトしていて、そのまま夢の中へ旅立った。
**********
身体がガクッと震えて跳ね起きた。
「!?!?………
げっ……嘘でしょ」
時計は1時を回っているじゃないか。
疲れてるせいかすっかり寝てしまっていたみたい。
凛太郎くんは薬が効いたのか穏やかな顔をして眠っていて、おでこに手をやるとだいぶマシになっていた。
俊輔さんに任せて帰らないと。
さすがに男ばっかりの家に泊まりはまずい。
自分の中では仕事の一部とはいえ、晃にとってはそんなこと関係ないだろうとコソコソと部屋を出る。
リビングに向かうと暗い中、冷蔵庫の光に照らされる人物が目に映った。
「……お前何してんだ」
「そっちこそ…何してんの」
「自分の住んでる家で何しようが勝手だろうが」
確かにそれは蓮斗さんで、どうやら格好をみると帰ってきたばかりの様子。
「またどこか行ってたんですか?」
「…まあな。っていうかお前、こんなに夜遅くにどこに行く気だ」
はぐらかすように質問をかぶせてきた彼に、私は
「帰るんですけど……」
と呟いた。
「こんなに遅くにか?由乃さんの部屋あんだろ。泊まってけ。」
心配してくれてるんだろうか……
なんて一瞬思ったけれど
「お前に何かあったら、俺の人生が路頭に迷うだろ」
どうやら心配してるのは自分のことのようだ。
「泊まりません。彼氏に悪いし……」
「お前みたいな口の悪りぃ女襲ったりしねぇよ。誰もな」
「そういうことじゃなくて、気持ちの問題なんですっ!」
フラフラと色んな女の子をたぶらかしてる人にはわからないだろうな。と率直に思う。
まぁこんなところで言い合っていたって仕方ない。
タクシーを呼ぶか。
スマホを取り出してタクシー会社の電話番号を調べていると、お茶を飲んだ蓮斗さんが横から口を開いてきた
「由乃さんの部屋に入りたくないんだろ。お前」
そしてかけられた言葉に身体が固まる
考えないようにしていたのに、ズバリと言い当てられた気分になるのは何故
確かに、晃に悪いという気持ちはあるけれど、お母さんの部屋で寝るのは嫌だという気持ちもないといえば嘘になる。
鋭い男は……苦手だ。
「ほっといてよ。私いま健吾さんのことでも忙しいし、大変なんだから……」
「……健吾……ああ」
暗がりに慣れた目が、彼の何か知っているような顔を捉えてしまった。
「………なにその顔」
「借金のこと聞いたのか?お前も」
借金……
借金!!!?