アイドルの素顔に夢を見るのは間違っている
結局その後、何事も無かったように蓮斗さんは去っていった。本当に根っから女を振り回す生き物なんだろう。
まぁあの人を更生させるのは、まだ後になるとしていまは健吾さんのことだ。
なんとかすると言った以上、なんとかするしかない。
だけど正直これっぽっちも思い浮かばない。
「……勢いに任せるしかないなぁ……」
そんなことを呟いて、もう夜遅いので自分の家で眠りについたのだった。
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睡眠わずか3時間。
どことなく気だるい身体を起こして、今日も私は用事を済ませたあと事務所に向かう。
健吾さんの借金を勝手に返せば怒るだろうか。
でもさすがにそれは踏み込み過ぎかな……
いきなり給料だとお金を渡すのも、頭がおかしくなったと思われそうだし。というかそのお金がすべてパチンコに消える気がする……
いろいろ考えながら歩いていると、またいつものパチンコ店の前で見たことある顔を見つけた。
……懲りない男だ。
「…健吾さん…」
「げっ!み、心優ちゃん…」
どうしてわざわざ私の通り道のお店に行くんだろう。疑問すぎるし、素でやってるなら頭が悪すぎる。
「何回言えばわかるんですかっ。」
ジロリと睨みつけると彼はタジタジになる
でもふと考えた。
いつも”ダメ”としか言っていない。だから打ち解けられてないのだろうか……
それなら一度、どんな様子でパチンコを打ってるのかみてみるのは?
「ま、マネージャー…黙ってる方が怖いんだけども」
そんなことをいう健吾さんを無視して、私はスケジュール帳を開いた。
今日は、特に誰かと会う予定もしていない。
ダンスと歌のレッスンのスケジュールは、これからまた次の分を調整。
今日は凛太郎くんも病み上がりだし、事務所の掃除でもして書類整理でもしようと思っていただけだ。
「も、もしもーし…」
「よし。一緒にパチンコしよう。」
「……へ?」
パタンとスケジュール帳を閉じたと同時に発したセリフに、彼は目をパチクリさせる。
「私、やったことないから。教えてくださいね。軍資金は出す」
「え、な、なに?どういう風の吹き回し??」
「……頭ごなしにダメって言うんじゃなくて、一度健吾さんの様子を見てみるのもいいかなって。」
「ま、まじ?」
「このお店もう入れるんですか?俊輔さんに連絡いれて、中に入りましょ」
いまだに信じられない様子の健吾さんを置いて、初のパチンコ店へ。入った瞬間、タバコの臭いと音が私を襲った。
……心折れそう……
だけど、まぁ一度くらいは頑張るか。