アイドルの素顔に夢を見るのは間違っている
健吾さんに色々教えてもらって、とりあえず簡単そうな台に座り、開始から30分
何が面白いのか全くもってわからない。
これは有名なアニメのやつだし、確かに映像は楽しいけどただハンドル持ってるだけでどこをどう楽しめばいいのか……
だけど、隣で健吾さんは真剣。
思ってる以上に疲れる……
あ、なんかわからないけどリーチだ……
って揃った……
「え!!?マネージャー揃ってるじゃん!!」
「はい…揃ったらどうなるんですか?」
「って、確変じゃん!!やばっ!!!」
確変ってなに??
理解できない専門用語に眉をしかめた。そしてここから私は座っている台から動けなくなる。
「……これいつになったら終わるの?」
リーチも大当たり表記も止まらない。
パチンコの玉は恐ろしいくらい出てくるし、私はもうやめたいのに
「絶対やめたらだめ!!!」
と隣の彼に怒られてしまったせいで身動き取れず。
「もうやだ。健吾さん変わって下さい……」
「いや、俺だとすぐ終わりそうだし。これがビギナーズラックと言うやつか。マネージャーがんばっ!」
大声で話さないと聞こえないし、喉痛い。
この人アイドルやるのにこんなところにいて喉大丈夫なのか?とまで思ってしまった。
私のやめたいと、健吾さんのダメがぶつかり合って何時間か過ぎたころ。
やっと苦痛の時間が終わる。
私が帰るというと、彼はパチンコ玉をお金に交換してきてくれた。
「見て!!マネージャー!!!15万弱!!」
「……へー……15万弱……15万弱!!?」
まさかの大金に私は目をぱちくりさせる。
「俺、こんなに勝つ子初めて見た。すげぇ」
「……使ったのが五千円くらいだから、え、嘘。そんなに!?」
「……はい。これは心優ちゃんが勝ったから心優ちゃんのね。」
はい。と手渡されたお金を見て、正直驚いた。
あんなに貸して貸してというくせに、こういうところはしっかりしてるんだ……
こんなにあっさり稼げるなら、これでお父さんの借金をと考えるのも仕方ないかもしれない。
なんだか稼ぎごたえのないお金だもん。
「マネージャー?どうかした?」
「……借金。どうするつもりですか?」
だけど、やっぱり運任せで余計に増えたら身も蓋もない。健吾さんの気持ちは重々承知だけど、ちゃんとアイドルをやるつもりなら待ってる時間もない。
私の真面目な顔に、健吾さんはお金を持ったまま固まってしまった。