アイドルの素顔に夢を見るのは間違っている


段々目が泳いでいく健吾さんを、じっと見つめつづける。


「な、なんのこと?」


下手くそかっ!!
私は心の中で盛大に突っ込んだ。



「私、もどかしいの大嫌いだからはっきり言う。お父さんの借金のこと。どうするんですか?」



なぜそれを

と顔に書いてあるんだけど……。まぁ蓮斗さんに教えてもらったことは伏せておこう。




「いや、別に、マネージャーには関係ないというか」


「今後の活動に響いてきたりするので、関係あると思うんですけど。」


「……俺がなんとかするから。ほらこれは受け取って……」


話を必死にそらそうと諭吉さんをヒラヒラと私に差し出す彼に、頭を抱えた。


「あの、健吾さん……」


再び言葉をかけようとした刹那


どちらかのスマホが鳴り響いて遮られる。


こんな大事な時に……っ!!!


そう思っていたら、彼の方が先にポケットからスマホを取り出して


「俊輔だ……」


と言いながら電話に出た。


「………もしもし……」



もちろんなにを話しているのかなんて全くもってわからないし、ただ待つしかないのだけど


健吾さんが目を見開いたことで状況が変わる。



「す、すぐ帰るから。わりぃ。」


………何か良くないことが起きたな……



「何があったんですか?」


私の質問におどおどとする彼は、大きくため息をついた後


「……いま、事務所に……」


とゆっくり言葉を繋いだ


「……事務所に?」


「借金の取り立てが………」


「………はぁ。」



もうため息しか出ない。そんな私を差し置いて走り出した健吾さんは、なんとかするからっ!とかほざいてる。




…くだらないプライド。


父親への意地。


そしてきっと、彼の性格上


みんなに迷惑はかけたくない


これだろう。



……ここまできたらもう時間はないな。この問題




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