アイドルの素顔に夢を見るのは間違っている


「あ、でもよく考えたらさ、恋って断定するのは早いんじゃない!!?」



「……みゆちゃん藪から棒にどうしたの?? お熱ある??」



私としては、もやもやずっと考えていたので話は繋がっているんだけど、凛太郎くんからしたらなんのことかわからないらしい。


それもそのはず。
1日経ってる上、今ここは彼らの家。
そして私はご飯を作りに来ている。



「いやね、俊輔さんのこと。健吾さんは男だとかいうけど、違う可能性もあるわけじゃん。」


「……本人に聞けば良いのに…」


ゲームをしている慎太郎くんが冷静にそうつっこんできた。


いやわかってる。
私だって、こんなにもやもや悩んでいるよりも本人に聞いた方が間違いないと思ってるよ。



だけど、あの人私と会話のキャッチボールしてくれないんだもの。聞いたところで……じゃないか。



味噌汁の味を見ながら眉をしかめて、作戦を考える。



どうしたもんか……


なんて思って、味噌を足していると



「たっだいまー!!!」


明るい声が部屋に響き渡った。




「あ、俊輔さん」


「あらなに。来てたの?小娘」



蔑むように見下して、鼻で笑うと彼はご機嫌のまま机に紙袋を置く。



「……俊輔なんだよこれ。」


「もらったのよ。彼から」


語尾にハートマークがつきそうなくらい乙女チックにそう言い放った俊輔さんに、私の手が止まった。




……彼


「…彼ってばね……私のこと綺麗だって言うの。肌とか女に負けてないって……もうドキドキしすぎて死んじゃうかも……」




背の高いイケメンが、まるで女の子みたいに顔を赤らめながら嬉しそうに話してる。



……いやもう恋してるじゃねーか。
違う可能性を考える時間終わった………


「私ね…ももえちゃんに憧れてるの。アイドルになって絶世期の時に、結婚するからって舞台にマイクを置いて引退するのよ」


ファンの女の子は、違う意味でびっくりするだろうよ。
その前にこの日本の法律もなんとかしなきゃな



「そのあとは一切表舞台に出てこないから。やっぱり乙女の夢よねぇ」


いやあんた男。



ツッコミどころが多いし、恋をして絶望的にポンコツになっている俊輔さんに、私は頭を抱えたのだった。
< 42 / 66 >

この作品をシェア

pagetop