アイドルの素顔に夢を見るのは間違っている


返事がない。

まぁそりゃ徹夜でゲーム買いに行って帰ってきたら寝るよね。


でも内容が内容なだけに可哀想なんて一切思わないぞ。私は。



「開けるからね。」


一声かけてドアを開ける。



そこで驚愕した。




窓のシャッターを閉めているせいなのか、朝なのに真っ暗な部屋。
だけどそこにポツンと小さな光。
ぽちぽちとなっている音
そしてヘッドフォンしながら私に目もくれない慎太郎くん。





こいつ…マジか。



もはやドン引きしてしまい時が止まった。



え、徹夜で並んだのに眠りもせずにゲームしてるの??



理解しがたい光景に後ずさりしそうになったけど、ここで怯むわけにはいかないと一歩を踏み出す。



彼の部屋には沢山のフィギュア。

ゲームも雑誌も漫画もDVDも山積みだ。



「…慎太郎くん」



「……」


「慎太郎くんっ!!」


「っ!!?」



いきなり肩に触れたからか、飛び跳ねた彼は

その瞬間



「あああああああ」


と大きな声をあげた。



「ちょ、なに?」


「みゆちゃん何すんの!!?負けたじゃん!死んだじゃん!!」


「え、いや、しらな」



「俺がこのゲームするためにどれだけの苦労を重ねたと思ってるの?? ヘッドフォンしながらゲームしてるときは、話しかけないって暗黙の了解なんだけど!!」



「ご、ごめん。」



ヘッドフォンをズラして首にかけてる慎太郎くんの勢いに負けてつい謝罪の言葉を述べる。



「…もう。気をつけてよね」



そしてそのまま彼はまたヘッドフォンをつけてゲームを始めようとした。




いや待て。違う。なんで私が謝ってる




「…ちょっと!!何ゲームしようとしてんの?」


「……へ?」


「話があってきたんだから一回やめて。」



よく見るとひどい隈ができていて、目が赤い。



これ凛太郎くんよりも健康面やばいんじゃ………。



「なに?これやるんだけど」


しかもどことなく喋り方がきつく感じられた。
もしかして、ゲームをすると性格変わるとかそっち?
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