アイドルの素顔に夢を見るのは間違っている
あからさまにパァアアと明るい表情をした5人。
なんだか蓮斗さんに、してやられた感じだけど
もういいか。
その後はみんなでこれからどうするべきかとか、事務所の権利書のことや遺産の手続きやら、母の後のことをすべてやりとげることになった私。お世話になったバイト先に話をし、いまは人が足りてるから大丈夫だと入ってるシフトが終わった後、すぐに辞めさせてもらえた。
もちろん晃にも事情を話し、背中を押してもらう。
手続きの最中、挨拶でもしようと教えられた事務所とやらに向かった。どうやら母はでかい家も誰かに買ってもらっており、そこに5人を住まわせていたみたいだ。
寮ってことかな。
あの人…ほんとに何者。
まぁこれから、仲良く、そして厳しくしていかなくてはと気合いを入れてスーツを着てきたし。いきなり社長なんて無理に等しいけど、その辺は俊輔さんがフォローしてくれるらしいし、まだ母がお世話をした人が沢山いるみたいで助けてもらえるとは聞いている。
気軽にやればいいって言われたけど……なんかドキドキするなぁ
不甲斐ないけど頑張ろう
少し早目に事務所の前に着いたので、深呼吸をしていると中から声が響いた。
「……もう!蓮の演技力には、心奪われちゃったわ! 最高!!惚れ惚れしたわよ…さすがは私の蓮」
「だれがお前のだ。」
……ん?
声は確かに俊輔さん……だと思う。
中々いい声だったし間違いないよね…
だけどなんだかおネェっぽい話し方だ。
しかも演技力?なんのこと。
「……いやぁ心優ちゃんが単純で助かったよね。俺ら、由乃さんが死ぬまであの子のことしらなかったけど、良く機転きかしたよな。蓮さすが」
「……まぁな。健吾は一番上のくせに頭わりぃんだよ。こういうのは、嘘も方便。それにあーいう女は押して引くと簡単に釣り上がる」
…………なんだと。
「いまさら……他の事務所にうつって上がいると困るよね……由乃さんに恩はあるけど、よそに移れない一番の理由はみんなそこだもんね。楽して有名になって、僕声優さんに会いたい」
「……慎ちゃんってばほんとにアニメとゲーム好きねぇ。またピコピコして、目を悪くするわよ」
「……でも僕は、ここに必要ない気がする……死にたい……」
「凛ちゃんはもっと自信持った方がいいわよ。」
なんだ……これは
なにが行われている。
そして俊輔さんの話し方は一体どうした……
「俊の話し方もウケた。お前おネェのくせにあんな男らしい話し方もできるんだな」
「あらやだ。健ちゃんも、あの小娘に頼みながら競馬の結果にソワソワしてたでしょ。私フォローに悩んだんだから」
競馬!?
頼んでる時に!?
なんてやつなの!?
「まぁ、とりあえず情に流される頭の悪い女で助かったってことだな」
バンッ!!!
蓮斗さんの声を遮るように思い切り事務所を開けると、5人は
まずい
みたいな顔をし始めた。
「……どういうことか説明しろ。このクズ共」
この行き場のない怒りはどこに行けば良い。