この関係を壊してでも伝えたいこと
木曜日の黄昏
筆圧は強い方ではない。
シャーペンは0.3mmを愛用しているくらいだ。
右手に持つ真新しいチョークで弱々しく黒板を引っ掻いて秘密を書き入れていく。
このクラスになって初めて巡ってきた日直はあれからちょうど一週間後の事だった。
一人でこの時間帯の教室にいるとどうしても思い出してしまう。
考えないようにしているのにふとした瞬間それは音もなく忍び寄って来る。
からっぽの教室を見回していたら出来心が芽生えた。
カリカリとチョークを減らす無機質な音が自分一人だけということを強調するように響く。
「すき…だよ」
夕日に染められた教室で一人、手のひらで書いたばかりのそれをかき消しながら、伝えない言葉を吐き出した。
伝えたい相手はきっともう帰ったに違いない。
可愛いあの子と。
歩道の葉桜が紅葉しているように見えて夕日なんて嫌いだと思った。
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