この関係を壊してでも伝えたいこと
焦点の定まらない瞳で俺の名前を呼び続ける彗月に、おさまっていた不安がじわじわと膨らんでいく。


「凛ちゃん、ありがとう」


「うん」


「凛ちゃんは私のヒーローだよ」


「うん」


「親友だよ」


「うん」


「すき」


「うん」



「よかったぁ」


とろけるように笑ったハヅキは俺の体を引き寄せた。


「おい」


「いつもありがとね」


すき、だいすき、とうわ言のように繰り返し、俺を押し倒しそうな勢いで抱きついてくる彗月に困惑する。


何だっけこれ、床ドン…? 


されるがままになっていたら押し倒されていた。



「寝ぼけてる…?」


こんなに寝起きが悪いなんて18年目にして驚きの新事実。


いつも、俺より早く起きてるから知らなかったな。


どう起こそうか、と悩んでいると彗月が何も言わなくなった。


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