この関係を壊してでも伝えたいこと
でも私は知っている。
凛ちゃんが一人でネクタイを結べることを。
それを黙って私にやらせてくれていることを。
私はそれを知りながら
「凛ちゃんはしょうがないな」
と、困った顔をして甲斐甲斐しく世話を焼くのだ。
子供の頃と比べて格段に一人でできることは増えた。
いや、もうほとんど一人でできるに違いない。
それでも凛ちゃんは黙って私に世話を焼かせてくれる。
凛ちゃんは本当に優しい。
でも、その優しさがたまにつらい。
特別扱いをされていると錯覚しそうになってしまうから。
そんなことあるわけないのに。
「…部室行く前に手洗ってきていい?」
「はいよ」
消した私の思いの残骸は、白いチョークとともに手にまとわり付いてしまっている。
さっさと流していつも通りにならなきゃ。
こんな風にネガティブなのは夕日があの日みたいに茜色すぎるからに違いない。