コイゴコロ




『ねえ、花梨。俺、今、寝てたんだけどね。』


翡翠は、寝たせいで乱れたカーディガンも直さず、そのままベンチから降りてアタシの教室へ来た。


廊下側の席のアタシ。


翡翠は廊下側の窓の桟に腕を組んで体を前かがみにしている。


「知ってる。プリン育ててたんでしょ。」


『そうそう!でね……』


「大魔王様が怒って、枯れちゃったんでしょ。」


『そうなんだよ~!!花梨ちゃんってば、俺のこと、ずっと見てたんだ~』



ニヤニヤしながら、上目遣いでアタシを見てくる。


「勘違いしないでよ!!」


あたしの必死の弁解を聞こうともしない。


翡翠はただ、ニヤニヤいやらしい笑みを向けてくるだけだ。


『俺、可愛いでしょ~』


突然の翡翠言葉に答えがつっかえながらも、あたしは今日の翡翠を思い返す。


「そうなんじゃない?」


可愛らしいピンクのピンで留めた髪、夢ではプリンを育てて、直さずに乱れているカーディガン。


今あたしに向けられている笑顔だって、小動物みたいに愛くるしい。



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