コイゴコロ
『う・そ!!花梨のが可愛い。』
窓の桟を乗り越え、翡翠はあたしの机の真ん前に来て言う。
至近距離で見た翡翠の顔。
くっきり二重にスッと通った鼻筋、透き通るような白い肌にミルクティー色の猫っ毛。
座るあたしを見るため伏せられた目元には、長いまつげの影が落ちている。
「可愛いのはあんたなの!!」
『俺は可愛い、花梨も可愛い。』
「うん、自分で認めちゃうんだね。アタシも否定しないけど。」
『だ―か―ら―、花梨も可愛いに注目!』
じたばたしながらアタシに必死に訴えかける。
アタシは思わずクスッと笑みを漏らした。
「翡翠、あんたより可愛い女の子なんて滅多にいないよ。」
途端に、翡翠は笑顔を消した。
「な、何。」
『可愛いとか、気分わりぃ。』
「はい?」
『付き合ってよ。』
アタシの机に乗りながら言う。
なんだか真剣で、初めてみる顔で。
「…何言ってんの?」
アタシの言葉に、我に返ったようで。
『あは。花梨が好きだから♪』
元の笑顔でそう言った。
『授業始まるから、席戻るわ。』
「そうだね。うん。」
何だろ、今の。
アタシ、何て答えれば良いか、迷ったじゃん。