dream
空の文房具屋さん




カチカチカチカチ
コンコンコン
シューシューシュー

ここは世界でひとつだけの文房具屋さん。空にある文房具屋さん。

ガラスと金縁でできた地球儀のような外装。外を覗くと下には小さな街並みが見える。隣にはオレンジ色の高層ビルがあり、一本の橋で繋がっている。

お店の中は、人の胸元ほどの高さの棚が無数に並んでいる。会計の場所では、ミニチュアの赤い汽車が汽笛を鳴らしながら走っている。ガラスの壁に飾られた直径一メートル五十センチ程の丸時計が時間を知らせてくれる。中を舞い、黄金に輝くほこりと心地よい古びた匂いが充満している。

私は膨大な種類の文房具の中から、鉛筆と紙を選ぶ。誰に書くのかはまだ知らないが、いつか誰かに書くための鉛筆と紙を選ぶ。深い緑の鉛筆とクリームに近い横線の入った紙を選ぶ。

私は心を踊らせながら列に並んだ。




fin
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