dream
目的
薄暗い雰囲気の中、プールの水面が光に反射して壁に模様を描く。キラキラと輝く壁とは反対に水は灰色に濁り、ごみくずが浮いている。その状況に一歩後ずさる。でも、やるしかない。唾を飲みこみ、デッキブラシを手にとる。水が排水口を通り流れていくのを呆然と眺める。
「じゃあ、みんなで頑張ろう。」
私の他に男の子が2人、女の子が3人。私と同じようにデッキブブラシをしっかち握り、気合いが入っている様子だった。昼から夜にかけてどんどん掃除を進めていく。またこの汚れが擦っても擦っても中々落ちやしない。少しの苛つきと疲労感を感じながら必死にブラシを動かす。そんなとき、皆黒づくめの男たちが10人程なだれ込むように入ってくる。私は何事かと同様を隠せず焦っているとぐっと身を引き寄せられる。
「こっち。」
相手からは見えない物陰に隠れる。
抱きしめられるようなかたちで息を潜める。
「健太か。誰かと思った。」
「しょうがねぇだろ。お前ここの掃除初めてだから、フォローしねぇとな。」
「だいたい、あいつらは何?」
「ここらへんを仕切ってるマフィアだよ。」
「なんでこんな事するのよ?」
「あいつらはここの土地が欲しいんだよ。だが、俺たちが認めない。だったら力ずくで…って感じなんだろ。」
「でもここには大して価値なんてないでしょ。ただの室内プールじゃない。」
「俺たちだってそう思うけど。あいつらの目的なんて理解もできねぇよ。」
こんな馬鹿げた出来事が日常茶飯事に行われているなんて信じられない。
どうして自分達が隠れなければならないのか…。考えれば考えるほど腹がたつ。
「私が言ってやる。馬鹿げたことは止めろって。」
「止めろ!相手はマフィアだぞ。」
「そんなこと言ってこんな茶番につき合うなんて時間の無駄よ。」
そんな会話をしているうちにサングラスに、たぬき腹を抱えた低身長のボスが出てくる。
「行ってくる。」
「お前だけじゃ危険だ。」
「そんなこと言っていられない。」
私は勢いよくやつらの前に飛び出した。
「私はあんたと話がしたいの。争う気なんてないわ。」
「ほう。俺たちがマフィアだと知っていてそれを言うか。」
「だから何?これ以上こんなことを続けても意味がないと思っただけよ。」
「お前面白いな。わかった。場所を変えて話そう。そろそろラストシーンだとは思っていたよ。」
場所を喫茶店にうつす。
中では、オレンジの白灯がぼんやりとムードを引き出し、ボサノバミュージックが店内に心地よく響き渡っていた。
「で、お前達はあの場所を出ていかないのか?」
「出ていかないわ。あそこは私たちにとって大切な場所だもの。」
「あの小汚いプールがか?」
「そう。それにその小汚いプールの土地が欲しいのはあなたも一緒でしょ?」
「そうだな。俺たちはあの場所が欲しい。」
「でも、私たちは渡すわけには行かないの。あの場所は私たちにとって大切な場所だから。だから諦めて。」
そういった瞬間に一緒にいた男の子からカフェオレを頭からかけられる。私は何が起きたのか、理解できずに唖然としている。
「本当失礼なこと言ってすみません。」
小刻み数回頭を下げる男の子に苛立ちを感じる。
「何すんのよ。」
「お前状況わかってんのか。このままじゃ俺たちが生き埋めにされるぞ。とりあえず、俺の話に合わせとけ。」
「…わかった。」
男の子にボソボソと自分の指示に従う様言われる。
謝ろうとしたそのとき、
「お嬢様。お召し物をお取り換えいたしましょう。どうぞ、こちらへ。」
喫茶店の奥へ通される。
細い通路をクネクネ行くと一枚のドア。
ドアを開けると白を基調としたウォークインクローゼットが広がっていた。床から天井まで3m程で左右に3段ずつ服がかけられる仕組みになっている。更にいかにも私が好きなパステルカラーで愛らしい服たちが色分けされ、かかっていた。
「どうぞ、好きなものをお召しになって下さいませ。これは旦那様からのプレゼントでございます。」
「プレゼント?」
「左様でございます。では、ごゆっくりとお決めください。」
マスターはそう言い残すと部屋を去った。こんな状況ありえない。どれにしようか選ぼうとすればする程決められなくなっていく。とりあえず試着してみようと数着手にとろうとしたとき黒づくめの男たちが入ってくるや否や、洋服を次々と運び出していく。まだ服を決めていない私は状況を確認しようと叫ぶ。
「これはどういうこと?私はまだ服も何も決めてないのに…。」
「失礼ですが、洋服の内容を変えさせていただきます。」
「え?」
「ボスが貴方様のことを大変気にいられたのです。ボスは和装がお好みでいらっしゃいます。すぐに完了いたしますのでしばしお待ちください。こちらのお洋服も失礼いたします。」
そういうと私が持っていた数着も剥ぎとられるかのように持っていかれてしまう。服が全て入れ替わった後、少しの面倒を感じながらも選ぶ。しかし、好みに合うようなものがなくどうしようかと悩んでいるとひとつの考えが浮かぶ。
そうだ、面倒だけど色仕掛けすればもっと見せてもらえるかも。
なぜそんな考えに至ったのかも不明だが、私は足早にボスの元へと向かった。
Fin
「じゃあ、みんなで頑張ろう。」
私の他に男の子が2人、女の子が3人。私と同じようにデッキブブラシをしっかち握り、気合いが入っている様子だった。昼から夜にかけてどんどん掃除を進めていく。またこの汚れが擦っても擦っても中々落ちやしない。少しの苛つきと疲労感を感じながら必死にブラシを動かす。そんなとき、皆黒づくめの男たちが10人程なだれ込むように入ってくる。私は何事かと同様を隠せず焦っているとぐっと身を引き寄せられる。
「こっち。」
相手からは見えない物陰に隠れる。
抱きしめられるようなかたちで息を潜める。
「健太か。誰かと思った。」
「しょうがねぇだろ。お前ここの掃除初めてだから、フォローしねぇとな。」
「だいたい、あいつらは何?」
「ここらへんを仕切ってるマフィアだよ。」
「なんでこんな事するのよ?」
「あいつらはここの土地が欲しいんだよ。だが、俺たちが認めない。だったら力ずくで…って感じなんだろ。」
「でもここには大して価値なんてないでしょ。ただの室内プールじゃない。」
「俺たちだってそう思うけど。あいつらの目的なんて理解もできねぇよ。」
こんな馬鹿げた出来事が日常茶飯事に行われているなんて信じられない。
どうして自分達が隠れなければならないのか…。考えれば考えるほど腹がたつ。
「私が言ってやる。馬鹿げたことは止めろって。」
「止めろ!相手はマフィアだぞ。」
「そんなこと言ってこんな茶番につき合うなんて時間の無駄よ。」
そんな会話をしているうちにサングラスに、たぬき腹を抱えた低身長のボスが出てくる。
「行ってくる。」
「お前だけじゃ危険だ。」
「そんなこと言っていられない。」
私は勢いよくやつらの前に飛び出した。
「私はあんたと話がしたいの。争う気なんてないわ。」
「ほう。俺たちがマフィアだと知っていてそれを言うか。」
「だから何?これ以上こんなことを続けても意味がないと思っただけよ。」
「お前面白いな。わかった。場所を変えて話そう。そろそろラストシーンだとは思っていたよ。」
場所を喫茶店にうつす。
中では、オレンジの白灯がぼんやりとムードを引き出し、ボサノバミュージックが店内に心地よく響き渡っていた。
「で、お前達はあの場所を出ていかないのか?」
「出ていかないわ。あそこは私たちにとって大切な場所だもの。」
「あの小汚いプールがか?」
「そう。それにその小汚いプールの土地が欲しいのはあなたも一緒でしょ?」
「そうだな。俺たちはあの場所が欲しい。」
「でも、私たちは渡すわけには行かないの。あの場所は私たちにとって大切な場所だから。だから諦めて。」
そういった瞬間に一緒にいた男の子からカフェオレを頭からかけられる。私は何が起きたのか、理解できずに唖然としている。
「本当失礼なこと言ってすみません。」
小刻み数回頭を下げる男の子に苛立ちを感じる。
「何すんのよ。」
「お前状況わかってんのか。このままじゃ俺たちが生き埋めにされるぞ。とりあえず、俺の話に合わせとけ。」
「…わかった。」
男の子にボソボソと自分の指示に従う様言われる。
謝ろうとしたそのとき、
「お嬢様。お召し物をお取り換えいたしましょう。どうぞ、こちらへ。」
喫茶店の奥へ通される。
細い通路をクネクネ行くと一枚のドア。
ドアを開けると白を基調としたウォークインクローゼットが広がっていた。床から天井まで3m程で左右に3段ずつ服がかけられる仕組みになっている。更にいかにも私が好きなパステルカラーで愛らしい服たちが色分けされ、かかっていた。
「どうぞ、好きなものをお召しになって下さいませ。これは旦那様からのプレゼントでございます。」
「プレゼント?」
「左様でございます。では、ごゆっくりとお決めください。」
マスターはそう言い残すと部屋を去った。こんな状況ありえない。どれにしようか選ぼうとすればする程決められなくなっていく。とりあえず試着してみようと数着手にとろうとしたとき黒づくめの男たちが入ってくるや否や、洋服を次々と運び出していく。まだ服を決めていない私は状況を確認しようと叫ぶ。
「これはどういうこと?私はまだ服も何も決めてないのに…。」
「失礼ですが、洋服の内容を変えさせていただきます。」
「え?」
「ボスが貴方様のことを大変気にいられたのです。ボスは和装がお好みでいらっしゃいます。すぐに完了いたしますのでしばしお待ちください。こちらのお洋服も失礼いたします。」
そういうと私が持っていた数着も剥ぎとられるかのように持っていかれてしまう。服が全て入れ替わった後、少しの面倒を感じながらも選ぶ。しかし、好みに合うようなものがなくどうしようかと悩んでいるとひとつの考えが浮かぶ。
そうだ、面倒だけど色仕掛けすればもっと見せてもらえるかも。
なぜそんな考えに至ったのかも不明だが、私は足早にボスの元へと向かった。
Fin