dream
幼なじみ
昔からある少し味のある商店街。半年ぶりの帰省に私はワクワクしていた。

『ただいま!』

実家であるカフェに顔を出すと荷物を置いて隣の古びた屋根瓦の本屋に直行する。

『じっちゃん、ただいま!虹助(こうすけ)は?』
「あいつならまだ上で寝とるよ。」
『まだ寝てるの?しょうがないな。』

店の隣に続く階段を駆け上がってドアを開ける。開けた先すぐ虹助の部屋で一階にあるじっちゃんの部屋とつながっている。昔は、部屋として独立しており貸し部屋にしていたらしい。

『虹助?いつまで寝てるの!さっさと起きなさいよ。』
「ん〜…。」
『起きろって言ってんでしょ!』

私はそう言うと虹助にかけられていたタオルケットを引き剥がした。

「ん〜っ。美香ちゃん、寒いよ。」

起きあがる訳でもなく、猫のように縮まる。更に、二度寝を決め込むつもりだ。

『はいはい。さっさと起きるよ。じっちゃん一人で店番させて!』
「だってここ…じいちゃんの店だし…。」
『甘えるな!あんた、じっちゃんの後継ぐんでしょうが!』

私は、虹助を叩いて無理やり起こそうと心見るも中々起きない。しぶとい奴。引きずってでも…と虹助の腕に手を伸ばすと、逆に掴まれ、引き寄せられる。

「美香ちゃん、おかえり。」

耳元で囁かれ、私は顔が熱くなるのを感じた。言葉が出ずあわあわしていると

チュッ

頬に軽く感じた暖かさ。

「すごく会いたかったよ。」

屈託のない笑顔を見せられ、あまりの恥ずかしさに言葉が出ない。
バンッ

『さっ、さっさと降りて来なさいよね!』

虹助の背中を思いっきり叩き、咳き込彼をよそに、ドタバタしながら部屋を出た。

「美香ちゃん、どうかしたのかい?」
『ううん、じっちゃんなんでもないよ。虹助の奴を叩き起こしてあげただけ。』

パタパタと手うちわであおぎながら熱がひくのを待つことしか出来なかった。



夏だからと浴衣を着てきた彼にドキドキしてしまうのはすぐ後のお話。




fin.
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