熱帯魚とリグレット








大好きな仕事を放り出して走るのは、



きみに会いたいだけ。



この狭い水槽から抜け出して



きみのぬくもりに触れたいだけ。






スタジオを出たのはちょうど6時だった。


ここからいちばん近い駅に向かう。


ほんと、どこに行っても人が多い。


そんなことを考えながら走っていた。


急いで改札を抜けてタイミングよくやってきた電車に駆け込む。


ガタンゴトン、電車はゆっくりと発車し、徐々にその速度をあげていく。


……早く、早く。


腕時計と変わりゆく景色を見比べながら、気持ちは逸っていた。


< 16 / 27 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop