熱帯魚とリグレット
買い取った衣装とメイクで おめかし して、迎えたは彼との初デート。


撮影のテーマ、そのまんまだ。


腕時計とにらめっこ。


まだかな、まだかな。

なんだか緊張してきたな。

撮影の時よりずっと緊張するよ。


ドキドキと鼓動が高まる。


すると後ろから「やあ」という柔らかい声が聞こえてきた。


ぱっと振り返ると見えたやさしい笑顔。


その胸に飛び込んで抱きついた。


「おっと」


その人物は驚きながら、だけどぎゅっと抱き締めてくれた。


「久しぶり」

……ああ、もう、感情が爆発しそうだ。


「やっと、会えた」


彼は「そうだね」穏やかに微笑んだ。


「なんか、さ。

今日はいつにも増してキレイだね」


「ありがとう」


どんなに着飾っても、称賛されても、

きみのそばにいられないなら意味はない。


だって、私がおめかしする理由は、いつも。



「きみにキレイって言ってほしいから」



きみの隣に、自信を持って立てるように。


きみの自慢の彼女になりたいから。




               fin.





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