今ならやり直せる
友人との楽しい時間は瞬く間に過ぎ、またこんな時間を過ごせるかと思うと、本当に働いて良かったと思っている。

親しい友人には

「離婚して、やりなおせば」と言われたが、自分にはそんな勇気がない。

実家には、兄がいて、既に両親と同居しており、帰る場所はない。

東京で一人暮らしするほどの経済力もなければ、その先、何十年も暮らしていける自信もない。

離婚すればスッキリするだろうが、その後の事を考えると、とても勇気が湧かなかった。

新しい男に乗り換えるという方法もあるかもしれないが、そんな都合の良い相手は現れない。

帰りの電車に揺られながら、以前の自分よりマシだと言い聞かせる。
一日中家にいてやることもなく、花屋に行っては花を買って生けたり観葉植物を植え替えたり世話をし、過ごした。

もし、自分の好きな家を買えたならば、広い庭のある家が良かったと思う。

住居スペースは狭くなっても、広い庭が欲しかった。
この家は、土地ギリギリまで家が建てられており、窓を開けると、隣の壁が見える。それが更に心に閉塞感を増長させる。

家の前に着いて見上げると、真っ暗なリビングが目に入る。

夫に離婚を言い出せば、この暗い家に帰ってくることになるのかと思うと、やはり言い出せないと強く思う。

まるでロボットのように、同じ時間に帰ってくる夫。

そして、何も言わずにご飯を食べて、風呂に入りリビングでニュースを垂れ流して、寝床につく。
会話がないのは今に始まったことではなく、デートに誘われたときから会話はなかった。それを大人のデートだと勝手に思い込み、欠点と気付かず、重要な事と捉えなかった。

元々、自分は話をするのが好きだし、今日会ったことを話したり、今何を考えているかを話したかった。
いくら話しかけても、テレビ画面から視線を移すことなく、返事をしているのか、していないかもわからない反応で、いつの間にか話しかけることさえ辞めてしまった。

夜の生活も一年経たない間になくなってしまい、自分から求める事なんて出来ず悶々としてきた。

何でも話し合える夫婦ならば、そういったことも解決していただろう。

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