今ならやり直せる
お昼の時間になったので、約束の銅像の前に急ぐ。
柴田さんは先に来ており
「やった。来てくれた」と満面の笑みを見せる。
この笑顔を向けられて心が揺れる。
「お勧めの店があるから、そこでもいいですか?」と言われ頷くと、店の方へ歩き出す。
「あっ、これ」とビニール袋を手渡され、中を覗くと、小さな観葉植物の鉢が入っている。
「それさ、この間の抽選券の粗品。今はそのサイズだと百均でも買えるけどね」
「ありがとうございます。私、ゴールドクレスト好きですよ。上手く育てれば、立派な木になりますし」と言うと
「流石、華さん」言った後、ゴールドクレストを手に取り
「お前、良かったな。こんな人に育てて貰ってさ」と冗談を言うので、思わず笑ってしまう。
歩きながら
「華さんって、おいくつですか?」と聞かれ
「二十八です」と答えると
「えー、僕と同い年です。同級生です」と嬉しそうな声をあげる。
それを聞いて少し嬉しくなる自分がいる。
お店は大通りを外れて、路地を十分程行くとあり、隠れ家的な場所で初めてでは入りにくい雰囲気だった。
柴田さんは慣れているようで、さっさと店内に入っていき、定位置らしい席に座った。
店内の中央には、南国の木が植わっており、その木の枝が店の天井を這うように広がり、まるで木陰の下にいるようだ。
他にも小さな鉢植えの観葉植物が所狭しと、飾られていて、キョロキョロと見渡してしまった。
その様子に気付いたのか
「華さん、こういう店、好きでしょ?」と指摘される。
「はい。大好きです。落ち着きます」と本音が出る。
「良かった。同じ趣味ですね。僕も草花が大好きで、この店をネットで見つけ以来、常連です」
思わず
「花、好きなんですか?」と興奮してしまう。
「ええ。でも男が花を好きって、気持ち悪いでしょ?」と照れている。
「そんなことありません。素敵です」と語気を強めて言うと
「そんなに強く言われると、何だか照れますね」
店員がオーダーを取りにやってきたので、日替わりランチを頼んだ。
「普通、男って小さいとき、虫とか好きじゃないですか。僕は、どうも動く物が苦手で、その代わりに、花とか草の方に興味があって、皆が昆虫採集している横で押し花していました」と笑う。
「へぇー、じゃあ、私も小さい頃、植物図鑑持って、うろうろしていたので、会っていたかも知れませんね」
「あ、思い出した、あの時のかわい子ちゃん!」という言葉に少し驚くと
「冗談ですよ。騙されたー」と指をさして、二人で笑い合った。
ご飯を食べているときも、好きな花や、お勧めの植物園の話で盛り上がる。
こんな、楽しい食事はいつ振りだろう。
どんな高級な料理よりも、美味しく感じられ、その上、柴田さんの人柄にも触れることが出来て、あっという間に時間は過ぎていく。
「あの、今度はお店じゃなくて、お勧めの植物園があるので、一緒に行きませんか?」とデザートを食べながら話す。
これは、デートだろうか、既婚者であることを告げないといけないかも。でも、ここで言ったら、もう二度と誘って貰えないかも。
それでも黙っているなんて、卑怯だし、失礼だ。
頭の中で天使と悪魔が戦っている。
その時、柴田さんの携帯が鳴り、席を外した。
どこかホッとしていると
「ごめん、ホテルから呼び出し。すぐに出るね。あ、植物園のこと、また連絡するね」とお金を置いて慌てて去っていった。
お店を出て、色々と考える。
聞かれてから、既婚者だと言っても良いけど、それだとやっぱりずるいよね。でも、今日のような楽しい時間をもう少し過ごしたい。ずるいかも知れないけど、それが正直な気持ちだ。
告白されたわけでもないし、今は友達として会えばいいと、必死で自分に言い訳している。
デスクに戻り、机の上に、小さなゴールドクレストを飾る。
柴田さんは先に来ており
「やった。来てくれた」と満面の笑みを見せる。
この笑顔を向けられて心が揺れる。
「お勧めの店があるから、そこでもいいですか?」と言われ頷くと、店の方へ歩き出す。
「あっ、これ」とビニール袋を手渡され、中を覗くと、小さな観葉植物の鉢が入っている。
「それさ、この間の抽選券の粗品。今はそのサイズだと百均でも買えるけどね」
「ありがとうございます。私、ゴールドクレスト好きですよ。上手く育てれば、立派な木になりますし」と言うと
「流石、華さん」言った後、ゴールドクレストを手に取り
「お前、良かったな。こんな人に育てて貰ってさ」と冗談を言うので、思わず笑ってしまう。
歩きながら
「華さんって、おいくつですか?」と聞かれ
「二十八です」と答えると
「えー、僕と同い年です。同級生です」と嬉しそうな声をあげる。
それを聞いて少し嬉しくなる自分がいる。
お店は大通りを外れて、路地を十分程行くとあり、隠れ家的な場所で初めてでは入りにくい雰囲気だった。
柴田さんは慣れているようで、さっさと店内に入っていき、定位置らしい席に座った。
店内の中央には、南国の木が植わっており、その木の枝が店の天井を這うように広がり、まるで木陰の下にいるようだ。
他にも小さな鉢植えの観葉植物が所狭しと、飾られていて、キョロキョロと見渡してしまった。
その様子に気付いたのか
「華さん、こういう店、好きでしょ?」と指摘される。
「はい。大好きです。落ち着きます」と本音が出る。
「良かった。同じ趣味ですね。僕も草花が大好きで、この店をネットで見つけ以来、常連です」
思わず
「花、好きなんですか?」と興奮してしまう。
「ええ。でも男が花を好きって、気持ち悪いでしょ?」と照れている。
「そんなことありません。素敵です」と語気を強めて言うと
「そんなに強く言われると、何だか照れますね」
店員がオーダーを取りにやってきたので、日替わりランチを頼んだ。
「普通、男って小さいとき、虫とか好きじゃないですか。僕は、どうも動く物が苦手で、その代わりに、花とか草の方に興味があって、皆が昆虫採集している横で押し花していました」と笑う。
「へぇー、じゃあ、私も小さい頃、植物図鑑持って、うろうろしていたので、会っていたかも知れませんね」
「あ、思い出した、あの時のかわい子ちゃん!」という言葉に少し驚くと
「冗談ですよ。騙されたー」と指をさして、二人で笑い合った。
ご飯を食べているときも、好きな花や、お勧めの植物園の話で盛り上がる。
こんな、楽しい食事はいつ振りだろう。
どんな高級な料理よりも、美味しく感じられ、その上、柴田さんの人柄にも触れることが出来て、あっという間に時間は過ぎていく。
「あの、今度はお店じゃなくて、お勧めの植物園があるので、一緒に行きませんか?」とデザートを食べながら話す。
これは、デートだろうか、既婚者であることを告げないといけないかも。でも、ここで言ったら、もう二度と誘って貰えないかも。
それでも黙っているなんて、卑怯だし、失礼だ。
頭の中で天使と悪魔が戦っている。
その時、柴田さんの携帯が鳴り、席を外した。
どこかホッとしていると
「ごめん、ホテルから呼び出し。すぐに出るね。あ、植物園のこと、また連絡するね」とお金を置いて慌てて去っていった。
お店を出て、色々と考える。
聞かれてから、既婚者だと言っても良いけど、それだとやっぱりずるいよね。でも、今日のような楽しい時間をもう少し過ごしたい。ずるいかも知れないけど、それが正直な気持ちだ。
告白されたわけでもないし、今は友達として会えばいいと、必死で自分に言い訳している。
デスクに戻り、机の上に、小さなゴールドクレストを飾る。