今ならやり直せる
新たな年、新たな人生
剛は接客業の為、土日に休みを取ることが難しく、そんな時は会社の近くでランチを食べたりして過ごした。
冬が近づくと、剛のホテル業界も忙しくなるが、華の会社も繁忙期となる。
クリスマス、年末年始などイベントが多くなり、ホテルでは催事や、宿泊の予約が多くなり、それに合わせて、飾り付けの花が注文される。
そんな忙しい冬はあっという間に過ぎて、新しい年がやってきた。
新年の準備でお互い忙しく、一息ついたお正月明けに初詣に行く約束をした。
いつもの最寄り駅まで、車で迎えに来てくれる。
真冬で空気はピンと張りつめているが、柔らかい日差しが当たり、その緊張感を和らげている。
車は、華を見つけてすぐ側に停車した。
「明けましておめでとうございます」華は丁寧に剛に挨拶した。
いつもは車から降りない剛君が
「明けましておめでとうございます。今年も何卒よろしくお願いいたします」と深々と頭を下げる。
二人は向かい合ってお辞儀をして、大笑いした。
「都内は混んでいるから、少し離れた神社でもいいかな?」乗り込みながら聞く。
「いいよ。人が少ない方がいいね」
華は同意し、ゆっくりと車はスタートした。
年末がどれだけ忙しく、年始が更に忙しかったという話で盛り上がったあと、剛はぽつりと言う。
「華ちゃん、会いたかったよ」
剛の顔を見ると、まっすぐと前を見て運転している。その横顔が愛おしい。
「私も」
華は運転席に身体を近づけて、剛の頬に軽くキスをした。
「えーっ! もう一回お願い。その時は顔を向けるからさ。そうしたらキス出来るでしょ?」
いつものように笑わせて、車内は和む。
人がまばらな神社に到着し、二人は手を繋いで歩く。
たくさんの屋台が出ていたが寄り道せず、まっすぐ神社の境内に行き、お賽銭を入れ神妙に手を合わせる。
華は心の中で
「当たり前の日常がおくれますように」と願った。
華は、色んな事を経験し大きく価値観も変わった。毎日、美味しくご飯を食べやりがいのある仕事をし好きな人が
いる、この日常を大切に思うようになった。
でもこれらは、当たり前に毎日やってくるものではないことも知り、奇跡の毎日を送っているのだと気付いた。
病気になったり、仕事を失ったり、愛する人がいなくなったり、それらはいつくるかわからない。
だから、この当たり前と思っている日常が毎日おくれればもう何も要らない。
剛君をちらりとみると、まだ手を合わせている。
そして、わざと華に聞こえるように
「華ちゃんと、ちゃんとキス出来ますように」華は吹き出した。
屋台で焼きそばを食べたり、リンゴ飴を食べたりしていると子供の頃を思い出し懐かしさが込み上げる。
剛君はわなげの屋台を見つけると
「どれが欲しい?」と聞いてくる。
段々になっている棚に等間隔に景品が並んでいる。
ふと見ると、端の方にサボテンのぬいぐるみが置いてある。サボテンに目がついていて、頭にはピンクの花が咲いていてメキシカンハットを被っている。
タグがぶら下がっていて「サボテン君」と何のヒネリもない商品名が書かれていた。
それを指さして
「あれ」と言うと、剛君は腕まくりをして、輪投げを投げる。
何度か外すが、最後の輪がサボテンの身体にスポリと落ちた。
「よし!」と華の方を向いてガッツポーズする。
屋台のおじさんはサボテンを華に渡した。
「ありがとう」おじさんにお礼を言った後、剛君にもお礼を言う。
「どういたしまして」とサボテンの頭を撫でた。
夕方になり、ご飯を食べるところを探すために再び車に乗り込む。
エンジンをかけると、剛君は華に向かって言う。
「華ちゃん、俺と結婚前提に付き合ってくれませんか?」
華はサボテンのぬいぐるみを抱きしめながら、剛君を見つめる。
何も言わない華に
「え!? 無言!」と驚いてみせる。
もちろん、剛はわかっている。華の目に涙が浮かんでいることを。
「私で良ければ」絞り出すように答える。
答えてから混乱した頭が次第に冷静になり、さっき剛君が言った言葉がクリアになる。
「え!? 結婚前提!?」華は思わず言葉が出る。
剛は笑いながら
「はい、もう返事したから、取り消し出来ませーん」
華の反応を無視して車を走らせる。
「あー、お腹減った」
おどける剛君を見ながら
「こんな幸せでいいのだろうか」と胸が熱くなる。
和食屋の看板を見つけて
「ここでいい?」と華に確認し駐車場に車を止める。
そして、サボテンのぬいぐるみを華から奪い取り
「お前、いつまでも華ちゃんに抱かれているんじゃねーよ」と言い、少し緊張した車内を明るくする。
何事もなかったように楽しく夕食を済ませ、再び車に乗り込んだ。
剛君の顔を見ると同時にこちらを見ていて、目が合う。
吸い寄せられるようにキスを交わした。
暫く沈黙が流れたが、
「あそこの神社すごい。速攻、願いが叶ったし」
二人して笑い、再びキスをした。
冬が近づくと、剛のホテル業界も忙しくなるが、華の会社も繁忙期となる。
クリスマス、年末年始などイベントが多くなり、ホテルでは催事や、宿泊の予約が多くなり、それに合わせて、飾り付けの花が注文される。
そんな忙しい冬はあっという間に過ぎて、新しい年がやってきた。
新年の準備でお互い忙しく、一息ついたお正月明けに初詣に行く約束をした。
いつもの最寄り駅まで、車で迎えに来てくれる。
真冬で空気はピンと張りつめているが、柔らかい日差しが当たり、その緊張感を和らげている。
車は、華を見つけてすぐ側に停車した。
「明けましておめでとうございます」華は丁寧に剛に挨拶した。
いつもは車から降りない剛君が
「明けましておめでとうございます。今年も何卒よろしくお願いいたします」と深々と頭を下げる。
二人は向かい合ってお辞儀をして、大笑いした。
「都内は混んでいるから、少し離れた神社でもいいかな?」乗り込みながら聞く。
「いいよ。人が少ない方がいいね」
華は同意し、ゆっくりと車はスタートした。
年末がどれだけ忙しく、年始が更に忙しかったという話で盛り上がったあと、剛はぽつりと言う。
「華ちゃん、会いたかったよ」
剛の顔を見ると、まっすぐと前を見て運転している。その横顔が愛おしい。
「私も」
華は運転席に身体を近づけて、剛の頬に軽くキスをした。
「えーっ! もう一回お願い。その時は顔を向けるからさ。そうしたらキス出来るでしょ?」
いつものように笑わせて、車内は和む。
人がまばらな神社に到着し、二人は手を繋いで歩く。
たくさんの屋台が出ていたが寄り道せず、まっすぐ神社の境内に行き、お賽銭を入れ神妙に手を合わせる。
華は心の中で
「当たり前の日常がおくれますように」と願った。
華は、色んな事を経験し大きく価値観も変わった。毎日、美味しくご飯を食べやりがいのある仕事をし好きな人が
いる、この日常を大切に思うようになった。
でもこれらは、当たり前に毎日やってくるものではないことも知り、奇跡の毎日を送っているのだと気付いた。
病気になったり、仕事を失ったり、愛する人がいなくなったり、それらはいつくるかわからない。
だから、この当たり前と思っている日常が毎日おくれればもう何も要らない。
剛君をちらりとみると、まだ手を合わせている。
そして、わざと華に聞こえるように
「華ちゃんと、ちゃんとキス出来ますように」華は吹き出した。
屋台で焼きそばを食べたり、リンゴ飴を食べたりしていると子供の頃を思い出し懐かしさが込み上げる。
剛君はわなげの屋台を見つけると
「どれが欲しい?」と聞いてくる。
段々になっている棚に等間隔に景品が並んでいる。
ふと見ると、端の方にサボテンのぬいぐるみが置いてある。サボテンに目がついていて、頭にはピンクの花が咲いていてメキシカンハットを被っている。
タグがぶら下がっていて「サボテン君」と何のヒネリもない商品名が書かれていた。
それを指さして
「あれ」と言うと、剛君は腕まくりをして、輪投げを投げる。
何度か外すが、最後の輪がサボテンの身体にスポリと落ちた。
「よし!」と華の方を向いてガッツポーズする。
屋台のおじさんはサボテンを華に渡した。
「ありがとう」おじさんにお礼を言った後、剛君にもお礼を言う。
「どういたしまして」とサボテンの頭を撫でた。
夕方になり、ご飯を食べるところを探すために再び車に乗り込む。
エンジンをかけると、剛君は華に向かって言う。
「華ちゃん、俺と結婚前提に付き合ってくれませんか?」
華はサボテンのぬいぐるみを抱きしめながら、剛君を見つめる。
何も言わない華に
「え!? 無言!」と驚いてみせる。
もちろん、剛はわかっている。華の目に涙が浮かんでいることを。
「私で良ければ」絞り出すように答える。
答えてから混乱した頭が次第に冷静になり、さっき剛君が言った言葉がクリアになる。
「え!? 結婚前提!?」華は思わず言葉が出る。
剛は笑いながら
「はい、もう返事したから、取り消し出来ませーん」
華の反応を無視して車を走らせる。
「あー、お腹減った」
おどける剛君を見ながら
「こんな幸せでいいのだろうか」と胸が熱くなる。
和食屋の看板を見つけて
「ここでいい?」と華に確認し駐車場に車を止める。
そして、サボテンのぬいぐるみを華から奪い取り
「お前、いつまでも華ちゃんに抱かれているんじゃねーよ」と言い、少し緊張した車内を明るくする。
何事もなかったように楽しく夕食を済ませ、再び車に乗り込んだ。
剛君の顔を見ると同時にこちらを見ていて、目が合う。
吸い寄せられるようにキスを交わした。
暫く沈黙が流れたが、
「あそこの神社すごい。速攻、願いが叶ったし」
二人して笑い、再びキスをした。