今ならやり直せる
大龍房を後にするころ、日はすっかり落ちていて、森の中は真っ暗になっていた。

大木部長は車を走らせて、都内に戻りホテルのバーに立ち寄った。

お酒は好きだが、ホテルのバーは初めてで、その大人の雰囲気に飲まれてしまう。
ふかふかのソファー席は、華の身体を包み込み、軽い酔いで気持ちよくなってくる。

今まで、映画を見て、流行の店でランチを食べてカラオケに行っていた安っぽいデートを思い出して、あまりの子供っぽさに呆れてしまった。

「ホテルの部屋で飲もう」と言われ、一瞬、危険を感じたが、この流れも大人びていて、好奇心で足を踏み入れたくなったのは事実だ。

少し足取りをふらつかせながら、大木部長に寄りかかっている自分がいる。

部屋は高級ホテルらしくシンプルで、シックな感じにまとめられている。一番のインテリアは、窓から見えるキラキラした夜景だろう。

ベッドに腰掛けて夜景を眺める。

これが大人の女なのだと自己陶酔していると、大木部長が覆い被さってくる。

少し驚いたが、こうなることは覚悟していたし、今更拒否するのも不自然だと思い抵抗しなかった。
心のどこかで、まだ知らない大人の快楽というものが有るかもと期待したが、余りにも普通で落胆した。
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