日帰りの恋
頑張った君への、ご褒美?
 翌朝――

 アパートの前で待っていると、約束の午前8時ピッタリに神田さんは現れた。
 駐車場の端に停止したのは、間違いなく彼の車だ。

 私は密かに深呼吸して、すっきりと晴れた5月の空を見上げる。

(ああ、緊張してきた)

 でも、今さら逃げ出すわけにもいかない。
 視線を戻すと、神田さんの車へと小走りした。

「おはよう、真山」

 神田さんは車から降りてくると助手席側にまわり、ドアを開けてくれた。
 職場でもこういったスマートな動きをする彼だが、今日の私はそれだけでもう、別の意図を感じてしまう。

「あ、ありがとうございます。あの、おはようございます、神田主任」

 ぎこちなく挨拶する私を、彼は珍しいものでも見るようにした。
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