日帰りの恋
「いえ、そのう、何でもないです」

 素敵ですねとは、さすがに言えなかった。

「ふうん? それじゃまあ、出発するか」
「はいっ」

 いつもと違うスタイルでも、自分達は上司と部下。職場での関係と何ら変わらず、というより別の関係になれるわけもない。

 そもそもこのドライブは、もしかしたら、多分、どう考えても……

 仕事の延長なのかもしれないし。


「おじゃまします」
「どうぞ」

 初めて乗り込む、神田さんの愛車。
 紺のツーリングワゴンは、洗車したばかりなのかピカピカだった。

 ドライブのためにきれいに磨いたのかも、などと単純に嬉しくなりながらシートにおさまる。

 車内も清潔で、シトラス系の良い香りがする。クリーナーの匂いだろうか。
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