日帰りの恋
「なるほど。じゃあ、えーと……」

 少し離れて立つ二人の間を、一組のカップルが通り抜けた。手を繋ぎ、仲良さげに寄り添っている。
 何となく目で追ってしまい、慌てて神田さんに向き直った。

 彼は私に一歩近付くと、なぜかにっこりと笑う。

「よし、今日は俺がいっぱい買ってあげよう。遠慮しないで、好きなものを選びなさい」
「は、はあ?」

 私は目を丸くする。あまりにも唐突な申し出だった。
 
「一年ぶん、取り戻すつもりで楽しもう」
「えっ、でも、ちょっとそれは……」

 つまり、ご当地グッズを買ってあげようと神田さんは言うのだ。
 なぜ、どうしてそんなことを?

「仕事仕事で大変な一年だったね、うん、俺はよくわかってる。そうだな……これはまあ、頑張った君へのご褒美だ」
「ご、ご褒美?」
< 22 / 56 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop